「娘には内証よ」 公園で相手探し

 2005年の秋。上海市中心部の人民公園に毎週末、奇妙な光景が見られるようになった。

 結婚適齢期の子を持つ親たちが、我が子の写真とプロフィルを手に、まるで市場のように良縁を求める。

一時は1000人近くに膨らんだが、今は200〜300人に落ち着いた。

 植え込みの木にこんな紙がぶらさげてある。

 「女性 28歳 168センチ 49キロ 英語通訳 高給」

「希望の男性 年上8歳差まで 180センチ前後 肥満は不可 大卒以上

 月給8000元(1元は約14円)以上 商売人、娯楽業は不可」

 女性の親には声がかからない。男性の親は全体の1〜2割。女性のキャリアアップで、

相応の相手は「狭き門」になっているからだ。

 初参加の母親、斉桂蘭さん(57)は、名門大修士課程修了の娘(30)がいる。

外資系企業に勤務、月給は1万数千元だ。「相手は身長、学歴、収入が上でないと。

本人は仕事が忙しく、『無理して結婚しなくても』と言うし、こっちが焦ってしまって。

早く子どもを産まないと、私も年をとって面倒を見られない」

 斉さんは人垣をかき分け、「うちの子は性格がいい。化粧も派手じゃない」と声をかけるが、

意中の人はいない。「家でじっとしているよりはいい。もちろん本人には内証。

今日はこっそり、娘のアルバムから写真を抜き取ってきた」

 27歳の一人娘が神戸で自動車関連会社に勤めているという王梅華さん(52)は、

「日本人と結婚したら、家で家事でしょ。せっかくいい大学を出たんだから、うちの子に

そんなことさせられない」。ファイルには、大学の卒業証書、英語検定合格証、

それに戸籍、社会保険カードまで、コピーがぎっしりだ。

 親たちの相手探しは、04年末から、杭州、北京など都市部の公園で広がり始めた。

 上海にはこのほか、市の婦女連合会が05年7月から毎月1回、

土曜の夜に主催している「両親おしゃべり会」もある。

 会場のホールでは、二つのスライドが左右に並ぶ。右は男性、左は女性。

同時に写真付きで生年月日、学歴、職業が映し出される。司会者に駆け寄り、

お目当ての番号をアナウンスしてもらう。「××番、男性のご両親」。ここでも男性優位は変わらない。

 娘の父親がほおを紅潮させ、いきなりマイクを握った。「娘はオーストラリアに住んでいます。

一緒に来てくれる男性いませんか」。会場に緊迫感がみなぎる。子供に内証で来ている親も多い。

 若者たちは、競争社会の中で、自分のキャリアを積もうと懸命で、結婚相手探しへの焦りは見られない。

上海社会科学院が、上海、成都の20代男女を調査したところ、「結婚は独身よりいいか?」に

「同意する」は34・3%、女性のみでは27・4%にとどまった。一人っ子政策が始まったのは1979年。

適齢期を迎えつつある「小皇帝」の親たちは、「いい大学、いい仕事」。そして「いい結婚」まで、

子離れはできない。(上海 加藤隆則)

 上海の結婚事情 2004年、上海で結婚したカップルは12万3037組、離婚は2万7369組。

上海社会科学院が行った地元調査によると、1980、90年代は、人の紹介による結婚が60%を占めていたが、

市場経済化で社会の流動性が高まった結果、2000年以降は20%にとどまっている。

上海市婦女連合会によると、同会が運営する結婚紹介所での成功率は5〜7%という。

(2006年1月18日  読売新聞)

 

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